Amazon Web Services ブログ

Adtech Meetup ~変わる広告、変わらない価値~ 開催レポート

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)は 2026 年 7 月 17 日(金)、麻布台ヒルズの AWS ジャパンオフィスにて「Adtech Meetup ~変わる広告、変わらない価値 ― いまアドテク事業者が AWS に集まる理由~」を開催しました。アドテクノロジー(アドテク)・マーケティングテクノロジー事業を展開する企業 19 社から 39 名のお客様にご参加いただき、AI 時代の広告ビジネスの構造変化と成長戦略をテーマに、セッションと懇親会を通じて活発な議論と交流が行われました。

サードパーティ Cookie の廃止に代表されるシグナルロスや AI の台頭など、いまインターネット広告を支えるアドテク事業者は大きな転換点を迎えています。AWS はこうした変化に向き合うお客様を支援するため、リアルタイム広告取引(RTB: Real-Time Bidding)ワークロード専用のネットワークサービス AWS RTB Fabric を提供しており、国内では株式会社 fluct 様と UNICORN 株式会社様による国内初の商用本番接続が始まっています。本イベントは、この転換点を乗り越える新たな武器となる AI やインフラのトレンドをお届けすること、そして業界の垣根を越えた事業者間連携のきっかけを作ることを目的に企画しました。本記事では、イベントの模様をレポートします。

イベント概要

  • 日時: 2026 年 7 月 17 日(金)16:00 – 19:00
  • 会場: 麻布台ヒルズ 森JPタワー 36 階 AWS セミナールーム
  • 参加者: アドテク・マーケティングテクノロジー関連企業 19 社 39 名
  • アジェンダ
    • オープニング
    • Session ①: AI が変えるプログラマティック広告 ― いま起きている変化と、これからの対応
    • Session ②: 広告コストを収益に変える – AWS RTB Fabric のご紹介
    • Session ③: パネルディスカッション「アドテク事業者の成長戦略 ― オープンエコシステムが切り拓く次の一手」
    • クロージング
    • 懇親会・ネットワーキング

オープニング

イベントの冒頭では、AWS ジャパン 代表執行役員社長 白幡 晶彦より開会の挨拶を行いました。広告業界の各事業者の皆様が麻布台ヒルズに一堂に会したことへの感謝とともに、広告テクノロジーを取り巻く市場が大きく変化する中、お客様を起点にアドバタイジング領域に取り組んでいく AWS の姿勢を伝え、イベントの幕を開けました。

Session ①「AI が変えるプログラマティック広告 ― いま起きている変化と、これからの対応」

Speaker: 鈴木 康士郎(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト)

最初のセッションでは、AWS ジャパンの鈴木より、プログラマティック広告を取り巻く 2 つの大きな変化を解説しました。1 つ目は、サードパーティ Cookie の廃止・制限やプライバシー規制の拡大により、ユーザーの興味や行動に基づく広告配信が困難になる「シグナルロス」、2 つ目は、生成 AI が検索から購買まで消費者行動に入り込む「AI の購買プロセスへの浸透」です。そのうえで、この変化に対応し成果を出している先行企業の取り組みを、(1) オーディエンスセグメンテーション × AI、(2) AWS Clean Rooms × AI、(3) メディアプランニング × AI、(4) Agentic AI の 4つの領域に整理して事例とともに紹介し、「変化への対応は『やるかどうか』ではなく『いつやるか』の問題」と締めくくりました。

Session ②「広告コストを収益に変える – AWS RTB Fabric のご紹介」

Speaker: 関藤 寛喜(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト)

続いて、AWS ジャパンの関藤より、広告配信のインフラ層を支える AWS RTB Fabric を紹介しました。RTB では、一連の入札処理を概ね 100 ミリ秒以内に完了させる必要があります。この要件を満たすために維持する大規模なインフラのコストが利益を圧迫することが、SSP(Supply-Side Platform)/ DSP(Demand-Side Platform)事業者の構造的な課題となっています。

AWS RTB Fabric は、この課題を解決する RTB 通信に特化したネットワークサービスです。本イベントのタイトルにある「変わらない価値」、すなわちお客様が磨き上げてきた独自の入札ロジックや最適化アルゴリズムはそのままに、10 ミリ秒未満のレイテンシーと、標準的なクラウドネットワーク費用と比較して最大 80% のコスト削減を実現します。削減したコストと処理時間は、接続先の拡大による収益機会の最大化や、新たな取り組みへの投資に振り向けられます。サービスの詳細や海外事業者の導入事例については、ブログAWS Black Belt の資料をご参照ください。

Session ③ パネルディスカッション「アドテク事業者の成長戦略 ― オープンエコシステムが切り拓く次の一手」

パネリスト:

  • 株式会社 fluct 代表取締役 COO 黒田 岳志 氏
  • UNICORN 株式会社 取締役 KYO 氏

モデレーター: 松本 鋼治(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 戦略事業開発本部 プリンシパル事業開発マネージャー)

パネルディスカッションでは、AWS RTB Fabric 上で国内初の商用本番接続を実現した SSP 事業者の fluct 様と DSP 事業者の UNICORN 様をお迎えし、事業課題から成長戦略、AI 時代の展望までを議論いただきました。

アドテク事業者が直面する転換点

議論の出発点となったのは、生活者のデジタル利用時間の約 55% を Open Web が占める一方、広告費は約 30% しか投資されていないというギャップです。Open Web へのシフトが進む中で自社がどう変わっていくか、そして「買っていただける在庫供給とは何か」をどう追求するかといった経営課題が挙がったほか、サードパーティ Cookie 廃止によるターゲティングへの影響や、リテールメディア・CTV といった新しい広告在庫の拡大など、業界の転換点を示すトレンドも共有されました。

課題にどう向き合うか ― データクリーンルームと AWS RTB Fabric の価値

こうした課題への打ち手として、パブリッシャーのデータを外部に出さずに活用するデータクリーンルームの取り組みや、オンラインとオフラインを横断する新しい配信インフラの構想が紹介されました。

インフラ面では AWS RTB Fabric が話題となり、SSP の立場からは、「リクエストを絞る」という売上を下げる行為をしなくてよくなることで、守りのコスト削減ではなく攻めのビジネスにエンジニアリソースを振り向けられるという価値が語られました。DSP の立場からも、リクエストを多く受けるほど売上が上がる構造にあるため、通信コストを気にせず配信できる仕組みへの期待が示されました。

AI 時代の展望 ― テクノロジーと人の両輪で

最後に、AI 時代の展望について議論しました。複雑化する広告環境での最適なマッチングや、既存トラフィックの価値の再発見といった AI 活用の方向性が語られ、AI エージェントがメディアプランニングを担う時代には Open Internet が再評価されるのではないかという見方も示されました。一方で印象的だったのは、登壇者が揃って「人」の重要性を強調したことです。買い付けの利便化により事業者間の人的なやり取りが減っている今こそ、コミュニケーションを密にし、連携してサービスを作っていくべきだという見解で一致しました。AWS に対しては、データ流通の信頼性担保や個人情報対応など、事業者が本業に集中できる仕組みづくりへの期待が語られ、セッションは幕を閉じました。

クロージング・懇親会

クロージングでは、本日の議論で挙がった課題への次の一手につながる AWS からのご提案として、パネルでも議論になった事業者間連携を後押しする、AWS RTB Fabric のエコシステムを活かしたお客様同士の共創・マッチング支援などをご案内しました。イベント後のアンケートでは、多くの企業からこれらのご提案への関心が寄せられました。

セッション終了後の懇親会では、参加企業名を会場に投影し、参加者同士のネットワーキングを促進しました。同じ業界でビジネス上の接点がある企業同士でも「リアルでは初めまして」という挨拶が会場のそこかしこで交わされ、業界の垣根を越えた新たなつながりが生まれる場となりました。

参加者の声

ご参加いただいたお客様からは、以下のような声をいただきました。

  • 「RTB Fabric をはじめ、他社の広告事業の方向性についても知る機会をいただき、大変参考になりました。AWS さんのネットワークを通じて広告業界が盛り上がれると嬉しいです!」
  • 「RTB Fabric、新規に構築しようとしているサービスでは是非使ってみたいです!」
  • 「広告業界の動向・データ連携の進化、AI 時代における取り組みなど多くを学ぶことができ大変参考になりました。懇親会でも幅広く情報を得られました。」

アンケートにご回答いただいた方の 8 割以上から「今後もこのようなイベントに参加したい」との回答をいただきました。また、参加企業の多くがすでに広告配信基盤として AWS をご利用いただいていることも、あらためて確認できました。

おわりに

本イベントのタイトルである「変わる広告、変わらない価値」の通り、シグナルロスや AI によって広告を支えるテクノロジーと手法は大きく変わりつつあります。一方で、アドテク事業者の皆様が磨き上げてきた独自の技術やデータという事業の価値、そして事業者同士がつながり業界を盛り上げていくことの価値は変わりません。

本イベントでは、こうした転換点を乗り越える新たな武器として、AI の活用パターンや AWS RTB Fabric をはじめとするインフラの最新動向をお届けしました。また、パネルディスカッションから懇親会までを通じて事業者間連携の重要性があらためて共有され、アンケートで「接続可能なパートナー企業を紹介してほしい」という具体的なご要望を複数いただくなど、業界の垣根を越えた新たなつながりが生まれるきっかけとなりました。

AWS は、サービスの提供とお客様同士の共創・協働を支える場づくりを通じて、広告業界の発展に貢献してまいります。今後も同様のイベントを企画していく予定です。

AWS RTB Fabric の詳細や個別のご相談については、担当のアカウントチームまたはお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

このブログは、ソリューションアーキテクトの久野が執筆しました。